アメリカの牧師家庭に生まれたニーバー
「ニーバーの祈り」でよく知られているニーバーとは、この祈りを提唱した人物でもあるラインホルド・ニーバーの名前にちなんでいます。
ラインホルド・ニーバー氏は、アメリカ・ミズーリ州の牧師の家庭に生まれ、幼少期には父の元でキリスト教を学びました。
その後、キリスト教を学問としてとらえるようになり、大学や大学院では神学を選考し、宗教学や政治学における活動を繰り広げるようになったのです。
ラインホルド・ニーバー氏は、宗教学の専門家です。
その見地から、近代社会における倫理について著した書籍を、これまでに数多く出版してきました。
その多くでは、人間や個人の限界を冷静に見極めた上で、正義のために何をするべきか、また何をするべきではないのか、という点を説いています。
人間の中に潜んでいる善の部分だけではなく、悪の部分にも注目することによって社会情勢を理解しようというのがニーバー氏の説です。
「ニーバーの祈り」は心に響く平和の祈り
ラインホルド・ニーバー氏が提唱する「ニーバーの祈り」は、平和の祈りとも呼ばれています。
原文は英語なのですが、日本語では
「神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。」
と訳すことができます。
この祈りは、人間が神から与えられるべき3つの能力をたたえる内容で、深い意味が込められています。
3つの能力というのは、変えられないものを受け入れる冷静さ、変えられるものを変えようとする勇気、そして変えられないものと変えられるものを識別する知恵です。
まず「変えられないものを受け入れる冷静さ」についてですが、ニーバーは自分以外の全ての人やモノは変えることができないと考えています。
変えられないものに対して抗っても、深い悲しみや落胆に繋がってしまいます。
そうではなく、冷静に受け入れたほうが自分にとっては苦しみから解放されるだろうというのがニーバーの祈りです。
ニーバーが謳う「変えられるもの」というのは、自分自身のことです。
自分を変えることによって未来を好転することも可能となります。
また、自分が変わることによって周囲からの評価も好転するため、結果的に人生がプラスの方向へと軌道修正できるのです。
このニーバーの祈りは、人間が営む社会生活の根本的な部分に鋭く切り込んでいます。
平和な社会を築くためには、ニーバーの祈りを実践することが不可欠だと考える人は少なくありません。
近年では、この祈りは道徳的に高い価値を持つ言葉として世界中に広まっています。
著名人の座右の銘として使われることもあれば、文学作品の中に登場したり、歌の歌詞として登場することもあるほどです。